急迫不正の侵害

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 「急迫不正の侵害」とは、違法な法益侵害が現に存在しているか、又は間近に迫っていることをいいます。「急迫」・「不正」・「侵害」のそれぞれについて論点はありますが、その中でも侵害の急迫性にかかわるものを紹介します。
 まず前提として、急迫性が要求されているのは、そのような状況が存在した場合、公的機関による保護を求める余裕がなく、侵害から法益を守るために、実力行使をすることが必要となりうるからです。監禁罪(刑法220条)等の継続犯や、窃盗罪(刑法235条)等の状態犯などで少し問題となりますが、これらの場合でも新たな侵害が加えられる状況であれば、急迫性が認められます。特に問題となるのが、侵害を予期していた場合です。
 この点について、侵害の余地がある以上、急迫性は認められないようにも思えます。
 しかし、急迫性は、先述のように侵害の客観的な切迫性と理解されていますので、不意打ちであっても、急迫性が否定されるわけではありません。そのため、予期していた場合でも急迫性は直ちに否定されないと考えるべきです。判例も、確実に侵害が予期されたとしても侵害の急迫性は直ちに否定されないとした上で、その機会を利用して積極的に相手に加害行為をする意思(積極的加害意思)で侵害に臨んだときには、侵害の急迫性の要件は充たされないとしています(最決昭和52・7・21)このような場合には、もはや緊急状況下での防衛行為としての実質を失うといえるからであると思います。

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